2019年02月14日

行政事件訴訟法 第三条 告示により一括して指定する方法でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定と抗告訴訟の対象

 1 本件は,第1審判決添付の物件目録記載の土地(以下「本件通路部分」とい
う。)に面し一部が本件通路部分に含まれる土地を所有する上告人が,本件通路部
分について,建築基準法(以下「法」という。)42条2項の規定により同条1項
の道路とみなされる道路(以下「2項道路」という。)に指定する旨の被上告人の
処分が存在しないことの確認を求めている事案である。
 2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
 (1) 本件通路部分を含む奈良県南葛城郡a町(現在の奈良県御所市)は,法
の施行日である昭和25年11月23日以前から都市計画区域に指定されていたと
ころ,被上告人は,同年11月28日付け奈良県告示第351号により,「都市計
画区域内において建築基準法施行の際現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満1
.8m以上の道」を2項道路に指定し,同37年12月28日付け奈良県告示第3
27号(以下「本件告示」という。)により,上記第351号の告示を廃止すると
ともに「幅員4m未満1.8m以上の道」を2項道路に指定した。
 (2) 上告人が,前記所有地上の建物新築工事の建築確認申請に先立ち,本件
通路部分が2項道路に当たるか否かを奈良県高田土木事務所に照会したところ,平
成元年1月30日,建築主事から本件通路部分は2項道路である旨の回答がされた。
 3 原審は,上記事実関係の下で,本件告示は,包括的に一括して幅員4m未満
1.8m以上の道を2項道路とすると定めたにとどまり,本件通路部分等特定の土
地について個別具体的にこれを指定するものではなく,不特定多数の者に対して一
般的抽象的な基準を定立するものにすぎないのであって,これによって直ちに建築
制限等の私権制限が生じるものでないから,抗告訴訟の対象となる行政処分に当た
らないとし,本件訴えを不適法なものとして却下した。
 4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は次の
とおりである。
 (1) 法42条2項は,同条1項各号の道路に該当しない道であっても,法第
3章の規定が適用されるに至った時点において,現に建築物が立ち並んでいる幅員
4m未満の道で,特定行政庁の指定したものは,同項の道路とみなし,その中心線
から水平距離2mの線を道路の境界とみなすものとしている。
 同条2項の特定行政庁の指定は,同項の要件を満たしている道について,個別具
体的に対象となる道を2項道路に指定するいわゆる個別指定の方法でされることが
ある一方で,本件告示のように,一定の条件に合致する道について一律に2項道路
に指定するいわゆる一括指定の方法でされることがある。同項の文言のみからは,
一括指定の方法をも予定しているか否かは必ずしも明らかではないが,法の前身と
いうべき市街地建築物法の建築線制度における行政官庁による指定建築線について
は行政官庁の制定する細則による一括指定もされていたこと,同項の規定は法の適
用時点において多数存在していた幅員4m未満の道に面する敷地上の既存建築物を
救済する目的を有すること,現に法施行直後から多数の特定行政庁において一括指
定の方法による2項道路の指定がされたが,このような指定方法自体が法の運用上
問題とされることもなかったことなどを勘案すれば,同項はこのような一括指定の
方法による特定行政庁の指定も許容しているものと解することができる。
 本件告示は,幅員4m未満1.8m以上の道を一括して2項道路として指定する
ものであるが,これによって,法第3章の規定が適用されるに至った時点において
現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道のうち,本件告示の定める幅員1.
8m以上の条件に合致するものすべてについて2項道路としての指定がされたこと
となり,当該道につき指定の効果が生じるものと解される。原判決は,特定の土地
について個別具体的に2項道路の指定をするものではない本件告示自体によって直
ちに私権制限が生じるものではない旨をいう。しかしながら,それが,本件告示が
された時点では2項道路の指定の効果が生じていないとする趣旨であれば,結局,
本件告示の定める条件に合致する道であっても,個別指定の方法による指定がない
限り,特定行政庁による2項道路の指定がないことに帰することとなり,そのよう
な見解は相当とはいえない。
 そして,本件告示によって2項道路の指定の効果が生じるものと解する以上,こ
のような指定の効果が及ぶ個々の道は2項道路とされ,その敷地所有者は当該道路
につき道路内の建築等が制限され(法44条),私道の変更又は廃止が制限される
(法45条)等の具体的な私権の制限を受けることになるのである。そうすると,
特定行政庁による2項道路の指定は,それが一括指定の方法でされた場合であって
も,個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるも
のであり,個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができる。
 したがって,【要旨】本件告示のような一括指定の方法による2項道路の指定も
,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解すべきである。
 (2) そして,本件訴えは,本件通路部分について,本件告示による2項道路
の指定の不存在確認を求めるもので,行政事件訴訟法3条4項にいう処分の存否の
確認を求める抗告訴訟であり,同法36条の要件を満たすものということができる。

(最判平成14年1月17日  民集 第56巻1号1頁)

概略

告示により一定の条件に合致する道を一括して指定する方法でされた建築基準法42条2項所定のいわゆるみなし道路の指定は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。


※参考条文

行政事件訴訟法
(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。


建築基準法
(道路の定義)抜粋
第四十二条 この章の規定において「道路」とは、次の各号のいずれかに該当する幅員四メートル(特定行政庁がその地方の気候若しくは風土の特殊性又は土地の状況により必要と認めて都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、六メートル。次項及び第三項において同じ。)以上のもの(地下におけるものを除く。)をいう。
一 道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路
二 都市計画法、土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)、旧住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)、都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)、新都市基盤整備法(昭和四十七年法律第八十六号)、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)又は密集市街地整備法(第六章に限る。以下この項において同じ。)による道路
三 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道
四 道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法による新設又は変更の事業計画のある道路で、二年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの
五 土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの
2 都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。
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行政事件訴訟法 第三条 都市計画法一二条の四第一項一号の規定に基づく地区計画の決定と抗告訴訟の対象

 都市計画法(平成二年法律第六一号による改正前のもの)一二条の四第一項一号
の規定に基づく地区計画の決定、告示は、区域内の個人の権利義務に対して具体的
な変動を与えるという法律上の効果を伴うものではなく、抗告訴訟の対象となる処
分には当たらないと解すべきである。これと同旨の原審の判断は、正当として是認
することができ、原判決に所論の違法はない。論旨はすべて採用することができな
い。

(最判平成6年4月22日 集民 第172号445頁)

概略

 都市計画法(平成二年法律第六一号による改正前のもの)一二条の四第一項一号の規定に基づく地区計画の決定は、抗告訴訟の対象となる処分に当たらない。



※参考条文

行政事件訴訟法
(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。


都市計画法
(地区計画等)抜粋
第十二条の四 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる計画を定めることができる。
一 地区計画
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行政事件訴訟法 第三条  都市計画法八条一項一号の規定に基づく工業地域指定の決定と抗告訴訟の対象

 都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法八条一項一号に
基づき都市計画決定の一つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生
ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と
異なる基準が適用され(建築基準法四八条七項、五二条一項三号、五三条一項二号
等)、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができ
ず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから(同法六条四項、五項)、
右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度
で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果
は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様
の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような
効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害
を伴う処分があつたものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。
もつとも、右のような法状態の変動に伴い将来における土地の利用計画が事実上制
約されたり、地価や土地環境に影響が生ずる等の事態の発生も予想されるが、これ
らの事由は未だ右の結論を左右するに足りるものではない。なお、右地域内の土地
上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げ
られている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害さ
れているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁
の具体的処分をとらえ、前記の地域指定が違法であることを主張して右処分の取消
を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前
記のような解釈をとつても格別の不都合は生じないというべきである。

(最判昭和57年4月22日 民集 第36巻4号705頁)

概略

 都市計画法八条一項一号の規定に基づく工業地域指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。




※参考条文

行政事件訴訟法
(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。


都市計画法
(地域地区)抜粋
第八条 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。
一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、田園住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)


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2019年02月13日

行政事件訴訟法 第三条 都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業の事業計画の決定と抗告訴訟の対象

 都市再開発法五一条一項、五四条一項は、市町村が、第二種市街地再開発事業を
施行しようとするときは、設計の概要について都道府県知事の認可を受けて事業計
画(以下「再開発事業計画」という。)を決定し、これを公告しなければならない
ものとしている。そして、第二種市街地再開発事業については、土地収用法三条各
号の一に規定する事業に該当するものとみなして同法の規定を適用するものとし(
都市再開発法六条一項、都市計画法六九条)、都道府県知事がする設計の概要の認
可をもって土地収用法二〇条の規定による事業の認定に代えるものとするとともに、
再開発事業計画の決定の公告をもって同法二六条一項の規定による事業の認定の告
示とみなすものとしている(都市再開発法六条四項、同法施行令一条の六、都市計
画法七〇条一項)。したがって、再開発事業計画の決定は、その公告の日から、土
地収用法上の事業の認定と同一の法律効果を生ずるものであるから(同法二六条四
項)、市町村は、右決定の公告により、同法に基づく収用権限を取得するとともに、
その結果として、施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の
所有地等が収用されるべき地位に立たされることとなる。しかも、この場合、都市
再開発法上、施行地区内の宅地の所有者等は、契約又は収用により施行者(市町村)
に取得される当該宅地等につき、公告があった日から起算して三〇日以内に、その
対償の払渡しを受けることとするか又はこれに代えて建築施設の部分の譲受け希望
の申出をするかの選択を余儀なくされるのである(同法一一八条の二第一項一号)。
 そうであるとすると、公告された再開発事業計画の決定は、施行地区内の土地の
所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものであって、抗告訴訟の対象となる
行政処分に当たると解するのが相当である。
 右と同旨の見解に立ち、上告人のした本件事業計画の決定の取消しを求める訴え
を適法なものとした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所
論の違法はなく、所論引用の最高裁昭和三七年(オ)第一二二号同四一年二月二三
日大法廷判決(民集二〇巻二号二七一頁)は、事案を異にし、本件に適切でない。
論旨は採用することができない。

(最判平成4年11月26日 民集 第46巻8号2658頁)



概略

 都市再開発法五一条一項、五四条一項に基づき地方公共団体により定められ公告された第二種市街地再開発事業の事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。


※参考条文

行政事件訴訟法
(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。
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行政事件訴訟法 第三条 市町村営土地改良事業の施行の認可と取消訴訟の対象

 土地改良法は、八七条六項及び七項において、国営又は都道府県営の土地改良事
業につき農林水産大臣又は都道府県知事が決定した事業計画についての異議申立て
に関する行政不服審査法四五条の期間は当該事業計画書の縦覧期間満了の日の翌日
から起算して一五日以内とすること、及び右異議申立てについては右縦覧期間満了
後六〇日以内に決定しなければならないことを規定した上、八七条一〇項において、
右事業計画に不服がある者は右異議申立てについての決定に対してのみ取消しの訴
えを提起することができることを規定している。農林水産大臣又は都道府県知事の
行う右事業計画の決定は、当該事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行す
ることを決定するもので、公告すべきものとされていること(土地改良法八七条五
項)、右公告があつた後において土地の形質を変更し、工作物の新築、改築若しく
は修繕をし、又は物件を附加増置した場合には、これについての損失は、原則とし
て補償しなくてもよいものとされていること(同法一二二条二項)、また、右事業
計画が異議申立手続を経て確定したときは、これに基づき工事が着手される運びと
なること(同法八七条八項)に照らせば、右事業計画の決定は、行政処分としての
性格を有するものということができる。前記の土地改良法八七条六項及び七項は、
右事業計画の決定が行政処分として行政不服審査法による異議申立ての対象となる
ものであることを当然の前提として、異議申立期間等の特則を定めるものであり、
同条一〇項も、右事業計画の決定が本来行政処分として取消訴訟の対象となり得る
ものであることを当然の前提とした上、行政事件訴訟法一〇条二項所定のいわゆる
原処分主義の例外として裁決主義を採用する立場から、右事業計画に不服がある者
は右異議申立てについての決定に対してのみ取消しの訴えを提起することができる
としたものである。
 そして、土地改良事業は、国営又は都道府県営であるか市町村営であるかによつ
て特別その性格を異にするものではないところ、市町村営の土地改良事業において、
右に述べた国営又は都道府県営の土地改良事業における事業計画の決定に対応する
ものは、当該市町村の申請に基づき都道府県知事が行う事業施行の認可である。右
事業施行の認可も、当該事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行すること
を認可するもので、公告すべきものとされ(土地改良法九六条の二第七項)、右公
告があつた後における土地の形質の変更等についての損失は原則として補償しなく
てもよいものとされており(同法一二二条二項)、右事業施行の認可があつたとき
は工事が着手される運びとなるのであつて、右の事業計画の決定と事業施行の認可
とは、土地改良事業の一連の手続の中で占める位置・役割を同じくするのである。
そうすると、右事業施行の認可も、行政処分としての性格を有し、取消訴訟の対象
となるものといわざるを得ず、前記のように、国営又は都道府県営の土地改良事業
における事業計画の決定が本来取消訴訟の対象となり得るものであることを当然の
前提とした規定を置く土地改良法は、市町村営の土地改良事業における事業施行の
認可についても、それが取消訴訟の対象となることを認めているものと解せざるを
得ない。
 もつとも、土地改良法は、右事業施行の認可について、前記の八七条六項、七項
及び一〇項に相当するような規定は設けていない。しかし、これは、土地改良法が、
立法政策上、右事業施行の認可の先行手続として行われる認可申請を適当とする旨
の都道府県知事の決定につき、利害関係人の異議の申出を認め(九六条の二第五項
及び九条一項)、右事業施行の認可については重ねて行政不服審査法による不服申
立てをすることができないこととした(九六条の二第五項及び一〇条五項)ため、
右事業施行の認可に関する取消訴訟については裁決主義を採用する余地がなくなつ
たことによるにすぎないのであつて、右事業施行の認可が取消訴訟の対象となるこ
とを否定するものではないと解すべきである。
 以上のように、市町村営の土地改良事業に関し都道府県知事が行う事業施行の認
可は、取消訴訟の対象となるものというべきであるから、a町営土地改良事業に関
し被上告人が行つた本件事業施行認可処分が取消訴訟の対象とならないとしてその
取消しを求める訴えを却下した第一審判決及びこれを支持した原判決は、いずれも
法律の解釈を誤つたものといわざるを得ず、右違法が判決に影響を及ぼすことは明
らかである。第一審判決の引用する当裁判所昭和三七年(オ)第一二二号同四一年
二月二三日大法廷判決(民集二〇巻二号二七一頁)は、土地区画整理法に基づく土
地区画整理事業計画の決定に関するものであるから、事案を異にし、本件に適切で
ない。論旨は、右の違法を指摘する点において理由があり、その余の点について判
断するまでもなく、原判決及び第一審判決は、本件事業施行認可処分の取消請求に
関する部分につき、破棄又は取消しを免れず、右部分につき本件を神戸地方裁判所
へ差し戻すべきである。
 同四について
 土地改良法九六条の二第五項及び九条一項に規定する異議の申出は、市町村営の
土地改良事業に関し都道府県知事が事業施行の認可を行う前の段階において、利害
関係人に異議を申し出る機会を与え、都道府県知事の監督権の発動を促す途を開い
たものであつて、行政事件訴訟法三条三項にいう「審査請求、異議申立てその他の
不服申立て」に当たらないから、都道府県知事が土地改良法九六条の二第五項及び
九条二項の規定に基づき行う右異議の申出を棄却する旨の決定は、行政事件訴訟法
三条三項にいう「裁決」に当たらないことが明らかである。また、右異議申出棄却
決定は、利害関係者の法的地位に何ら影響を及ぼすものではないから、行政事件訴
訟法三条二項にいう「処分」にも当たらないものというべきである(最高裁昭和五
二年(行ツ)第七一号同年一二月二三日第二小法廷判決・裁判集民事一二二号七七
九頁参照)。したがつて、右異議申出棄却決定は取消訴訟の対象となり得ないもの
というべきであり、本件異議申出棄却決定の取消請求に関する部分につき本件訴え
を不適法とした原審の判断は、正当として是認することができ、原判決に所論の違
法はない。論旨は、採用することができない。
(最判昭和61年2月13日 民集 第40巻1号1頁)


概略

 市町村営土地改良事業の施行の認可は、取消訴訟の対象となる行政処分に当たる。




※参考条文

行政事件訴訟法
(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。

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