2019年04月03日

行政事件訴訟法第八条 休業補償給付等不支給処分取消

 上告理由第一点について
 一 上告人は、昭和五一年八月二六日に業務上被った負傷について、被上告人に
対し、昭和六二年六月一日以降の期間に係る療養補償給付及び休業補償給付の請求
をしたところ、被上告人から平成二年七月五日付けで給付をしない旨の決定(以下
「本件処分」という。)を受け、これを不服として、同月一六日、沖縄労働者災害
補償保険審査官に審査請求をしたが、その決定がされない間の平成三年一月二五日、
本件処分の取消しを求める本件訴えを提起したものである。
 本件処分のような保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険
審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会に対し
て再審査請求をすることができるものとされ(労働者災害補償保険法三五条一項)、
また、保険給付に関する決定の取消しの訴えは、再審査請求に対する労働保険審査
会の裁決を経た後でなければ提起することができないものとされている(同法三七
条)。すなわち、保険給付に関する決定に対する不服については、二段階の審査請
求手続が定められるとともに、処分の取消しの訴えと審査請求との関係について行
政事件訴訟法(以下「法」という。)の採る自由選択主義の原則(法八条一項本文)
の例外である裁決前置主義(同項ただし書)、それも再審査請求に対する裁決の前
置主義が採られているのである。しかし、法は、裁決前置主義が採られている場合
であっても、その例外の一つとして、「審査請求があった日から三箇月を経過して
も裁決がないとき」は、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することがで
きるものとしている(同条二項一号)(なお、法に「審査請求」というのは、法三
条三項により、審査請求、異議申立てその他の不服申立てをいうものとされている。)。
本件においては、本件訴えが法八条二項一号の要件を満たしているかどうかが、本
案前の争点となっている。
 原審は、労働者災害補償保険法が二段階の審査請求手続を定めた趣旨によれば、
本件処分の取消しの訴えについては、法八条二項一号の「審査請求」は労働保険審
査会に対する再審査請求を指すものと解すべきであるから、本件は同号の規定する
場合に当たらず、本件訴えは不適法であるとして、これと同一の理由により本件訴
えを却下した第一審判決に対する上告人の控訴を棄却した。
 二 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次の
とおりである。
 1 法八条二項一号は、裁決前置主義が採られている場合であっても、裁決庁の
裁決が遅延することによって国民の司法救済が遅れるという事態を回避するために、
裁決前置主義を緩和すべき一場合を定めるものである。行政処分について、二段階
の審査請求手続が定められ、かつ、第二段階の審査請求に対する裁決の前置主義が
採られている場合に、仮に法八条二頃一号の「審査請求」が第二段階の審査請求だ
けを指すものであるとすれば、第一段階の審査請求に対する裁決が遅延するときに
は、行政処分の取消しを求める者は、同号の適用によって司法救済を受けることが
できず、第一段階の審査請求に対する裁決について不作為の違法確認の訴えを経な
ければ、処分の取消しの訴えを適法に提起し得ないこととなる。このような事態は、
国民の司法救済の道を不当に閉ざすものであるといわなければならない。右の場合
には、法律に特段の定めがない限り(国税通則法一一五条一項一号、七五条五項参
照)、法八条二項一号の「審査請求」は、第一段階の審査請求と第二段階の審査請
求のいずれをも指し、そのいずれに対する裁決が遅延するときにも、同号が適用さ
れ、裁決前置主義が緩和されるものと解すべきである。
 2 労働者災害補償保険法は、前記のとおり、保険給付に関する決定に対する不
服について、二段階の審査請求手続を定め、かつ、取消しの訴えにつき第二段階の
審査請求に対する裁決の前置を定めている。その趣旨は、多数に上る保険給付に関
する決定に対する不服事案を迅速かつ公正に処理すべき要請にこたえるため、専門
的知識を有する特別の審査機関を設けた上、裁判所の判断を求める前に、簡易迅速
な処理を図る第一段階の審査請求と慎重な審査を行い併せて行政庁の判断の統一を
図る第二段階の再審査請求とを必ず経由させることによって、行政と司法の機能の
調和を保ちながら、保険給付に関する国民の権利救済を実効性のあるものとしよう
とするところにあると解せられるから、再審査請求に対する裁決を経ないで取消し
の訴えが提起されることは、本来同法の所期するところではないといえる。
 しかし、そうであるからといって、これらの定めから、保険給付に関する決定に
ついて、法八条二項一号の「審査請求」を第二段階の審査請求に限定するとの趣旨
を読み取ることはできないのみならず、労働者災害補償保険法は、審査請求に対す
る決定が遅延した場合に決定を経ないで再審査請求をすることを許容するなど、そ
の遅延に対する救済措置の定めを置いていないのであって、それにもかかわらず、
第一段階の審査請求についての法八条二項一号の不適用を定めたものと解するなら
ば、国民の司法救済の道を不当に閉ざす結果を招くことは明らかであるから、その
ような解釈は採り得ないといわなければならない。
 3 したがって、保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険
審査官に対して審査請求をした日から三箇月を経過しても決定(法八条二項一号の
「裁決」に当たる。)がないときは、審査請求に対する決定及び再審査請求の手続
を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができるものというべきである。
 三 そうすると、原判決には法八条二項一号の解釈適用を誤った違法があり、右
違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、その余の
論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件訴えを
却下した第一審判決を取り消して、本件を第一審に差し戻すべきである。

(最判平成7年7月6日 民集 第49巻7号1833頁)

概略

労働者災害補償保険法による保険給付に関する決定に不服のある者は、労働者災害補償保険審査官に対して審査請求をした日から三箇月を経過しても決定がないときは、審査請求に対する決定及び労働保険審査会に対する再審査請求の手続を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。


関連条文

行政事件訴訟法
(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)
第八条 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
3 第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。

posted by 判例ラノベ化プロジェクト at 08:59| 判例原文集 行政法

2019年04月02日

民法85 判例六法 丸暗記ドリル【メルマガ版】 #司法試験 #司法書士試験 #行政書士試験


★今日の問題★
次の記述の正誤を答えよ。

構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権の効力は、譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産が滅失した場合に、その損害をてん補するために譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶ。譲渡担保権設定者が通常の営業を継続している場合でも同様である。


10秒で考えよう。よーいドン!

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒

10秒

★今日の解説★

間違い。
 物上代位について述べた前半は正しいが、後半は間違いである。

判例を確認しておこう。
 構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保権は、譲渡担保権者において譲渡担保の目的である集合動産を構成するに至った動産(以下「目的動産」という。)の価値を担保として把握するものであるから、その効力は、目的動産が滅失した場合にその損害をてん補するために譲渡担保権設定者に対して支払われる損害保険金に係る請求権に及ぶと解するのが相当である。
 もっとも、構成部分の変動する集合動産を目的とする集合物譲渡担保契約は、譲渡担保権設定者が目的動産を販売して営業を継続することを前提とするものであるから、譲渡担保権設定者が通常の営業を継続している場合には、目的動産の滅失により上記請求権が発生したとしても、これに対して直ちに物上代位権を行使することができる旨が合意されているなどの特段の事情がない限り、譲渡担保権者が当該請求権に対して物上代位権を行使することは許されないというべきである。(最判平成22年12月2日)





●【公務員、宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説

難化する一方の行政書士、司法書士試験の民法を攻略するためのポイントは、試験科目の条文と判例を徹底的に読み込むことです。
条文と判例の知識の量によって行政書士、司法書士試験の合否が左右されると言っても過言ではありません。
とは言え、判例六法等で、民法の第一条から読み込んでいくのは、きついものがあります。
このテキストは、会話文形式で、民法の第一条から第千四十四条まで学ぶことができます。条文を一通り読むと同時に、重要な判例知識を学ぶことができます。




→ 【公務員、宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法入門 ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 民法総則編 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 物権法編・担保物権法編 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 債権総論編 現行法版 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 債権各論編 現行法版 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 親族法編 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 相続法編 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ民法債権法改正講義実況中継 民法総則編 ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ民法債権法改正講義実況中継 債権総論編1 ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ民法債権法改正講義実況中継 債権総論編2 ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))


posted by 判例ラノベ化プロジェクト at 22:00| オリジナル問題

行政事件訴訟法第八条 所得税更正処分取消請求

 上告代理人の上告理由について。
 上告人が国税局長を名宛人とする審査請求書と題する書面を浅草税務署に提出し
たのであるが、原判決によれば税務署長はこれを再調査請求書として取り扱い、所
得税法四九条四項二号によつて審査請求があつたものとみなされ、国税局長は審査
請求として補正を命じ、応じなかつたという理由で却下したというのである。本訴
の上告人の請求は更正処分の取消であるから同法五一条により原則として再調査決
定、審査決定を経なければ提起できないのであるが、国税庁長官又は国税局長が誤
つてこれを不適法として却下した場合には本来行政庁は処分について再審理の機会
が与えられていたのであるから、却下の決定であつてもこれを前記規定にいう審査
の決定にあたると解すべきことは原判示のとおりである。而して同法施行規則四七
条によれば、再調査請求をしようとする者は一定の再調査請求書に証拠書類を添付
して提出しなければならないと規定しているのであるが、税務署長の更正には青色
申告の場合を除いて、その理由を示されないから納税者としては何故に更正を受け
たのか判らないから証拠書類の添付のしようのない場合もあり、更正の理由は判つ
ていてもその所得が存しないときなどは、かゝる消極的な立証は困難であつて消極
的な立証の証拠書類の存在しないこともあり得る。然らば同規則で証拠書類の添付
を命じているのはかゝる書類があれば添付せよという趣旨と解すべく、証拠書類の
添付を所得税法四八条四項の方式と解すべきではなく、従つて証拠書類の添付のな
いとの理由で同項にいう当該請求の方式に欠陥があるものとして補正命令をなし、
更に提出なき故をもつて却下することはできないものと解すべきである。かくの如
く不適法として却下すべきでない場合に国税局長が誤つて却下した場台は前述説明
の如く同法五一条の審査の決定があつたものとして適法に出訴ができるものと解す
べきである。然るに本件において所得税法所定の審査の決定を経ていないから本件
訴は訴願前置の要件を欠き不適法なものとして却下した第一審判決及びこれを是認
した原判決は違法であつて共に破棄を免れない。

(最判昭和36年7月21日 民集 第15巻7号1966頁)


概略

 一 所得金額更正に関する審査請求の却下決定があつた場合でも、右却下が違法である場合には、右更正処分の取消を求める訴は審査の決定を経たものとして適法である。
二 審査請求書に証拠書類の添付がなく、これに対し補正を求めたにかかわらず補正をしなかつたからといつて、審査請求を却下することは違法である。

参考条文


行政事件訴訟法
(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)
第八条 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
3 第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。
posted by 判例ラノベ化プロジェクト at 09:13| 判例原文集 行政法

行政事件訴訟法第八条 懲戒処分取消請求


 一 (本件の問題点)
  本件記録によると、(1)公共企業体等労働関係法(以下「公労法」という。)
二条一項二号イの事業を行う国の経営する企業に勤務する一般職の国家公務員(同
条二項二号参照。以下単に現業公務員という。)であつた被上告人らは、いずれも
昭和三八年五月一日付で上告人から国家公務員法(以下「国公法」という。)八二
条に基づき懲戒停職処分を受けたので、同年七月一九日右処分の取消しを求めて本
件訴えを提起し、第一審においては、右処分には処分事由不存在及び不当労働行為
該当の瑕疵があると主張したが、原審においては、右主張のうち不当労働行為該当
の瑕疵があるとの主張のみを維持すると述べるに至つたこと、(2)右処分につき人
事院に対する審査請求(国公法九〇条参照)がされていないところ、原判決は、右
処分に不当労働行為該当の瑕疵があるとの主張がされている本件訴えについては国
公法九二条の二の適用はないと解すべきであるとして、右の審査請求に対する裁決
を経由していないことを理由に本件訴えを却下した第一審判決を取り消し、本件を
第一審裁判所に差し戻すべきものとしたこと、以上の事実が明らかである。
  論旨は、要するに、原判決が本件訴えにつき国公法九二条の二の規定の適用を
否定したのは、同条の解釈適用を誤つたものである、というのである。そこで、現
業公務員に対する国公法八九条一項所定の処分(以下不利益処分という。)の効力
を裁判上争う方法に関して検討する。
 二 (不利益処分の法的性質)
  現業公務員は、一般職の国家公務員(国公法二条二項、公労法二条二項二号、
国の経営する企業に勤務する職員の給与等に関する特例法二条二項参照)として、
国の行政機関に勤務するものであり、しかも、その勤務関係の根幹をなす任用、分
限、懲戒、服務等については、国公法及びそれに基づく人事院規則の詳細な規定が
ほぼ全面的に適用されている(なお、郵政省設置法二〇条参照)などの点に鑑みる
と、その勤務関係は、基本的には、公法的規律に服する公法上の関係であるといわ
ざるをえない。もつとも、現業公務員は、国が経営するものとはいえ、郵便事業等
という経済的活動を行う企業に従事するものであるし、更に、右公務員に適用され
る公労法は、労働条件に関する事項につき団体交渉の対象としたうえそれにつき労
働協約の締結を認め(同法八条)、また、国公法の適用を一部除外する反面、労働
基準法、労働組合法、労働関係調整法等の適用があることとしているのであつて(
同法四〇条一項参照)、これらの点などからすると、その勤務関係は、国公法が全
面的に適用されるいわゆる非現業の国家公務員のそれとは異なり、ある程度当事者
の自治に委ねられている面があるということができる。しかし、右の面も、結局は
国公法及び人事院規則による強い制約のもとにあるから、これをもつて、現業公務
員の勤務関係が基本的に公法上の関係であることを否定することはできない。
  そして、国公法は、不利益処分につき、人事院に対して行政不服審査法(以下
「行審法」という。)による審査請求をすることができ(同法九〇条一項。なお、
その手続に関する同法九〇条の二、九一条、九二条参照)、また、右の審査請求に
対する人事院の裁決を経た後でなければ、右処分の取消しの訴えを提起することが
できない(同法九二条の二)と規定しているが、これらの規定と右に述べたところ
とを合せ考えると、現行実定法は、右処分が行政処分(行政事件訴訟法〔以下「行
訴法」という。〕三条二項参照)であることを当然の前提としているものと解する
ほかはない(公労法四〇条三項〔昭和四〇年法律第六九号による改正前の公労法に
おいては四〇条四項。以下同じ。〕の規定は、不利益処分が行政処分であることを
否定する趣旨を示しているものではない。)。
 三 (不当労働行為該当の瑕疵を有する不利益処分の効力)
  現業公務員には、不当労働行為禁止に関する労働組合法七条の規定の適用があ
り(公労法四〇条一項一号参照)、したがつて、不当労働行為該当の瑕疵は、行政
処分である不利益処分の法律上の効力に影響を及ぼし、右瑕疵を有する不利益処分
は、違法な行政処分であると解するのが相当である。そして、一般に、行政処分を
違法ならしめる瑕疵は、それが重大かつ明白であるといえないかぎり、行政処分の
当然無効の原因ではなく、その取消の原因にとどまるものであるが、このことは、
不当労働行為該当の瑕疵についても、特に、これを別異に解すべき根拠は見あたら
ない。
 四 (不利益処分の行政段階における救済手続)
  国公法九〇条は、不利益処分につき人事院に対してのみ行審法による審査請求
をすることができるとしているが、他方、公労法四〇条三項は、右処分が不当労働
行為に該当する場合には右の審査請求をすることができないものとし、公労法二五
条の五によれば(労働組合法二七条参照)、右の場合には、公共企業体等労働委員
会(以下公労委という。)に対して不当労働行為救済の申立てをすることを許して
いる。
  右各規定によると、法律は、不利益処分につき、不当労働行為該当の瑕疵を有
する場合とそれ以外の瑕疵(処分事由不存在、裁量権の逸脱等)を有する場合とで、
それに対する行政段階における是正、救済の手続を分離しているのであるが、その
趣旨は、不当労働行為該当の瑕疵の存否の判断をそれに適する公労委に委ねて人事
院には行わせないこととし、結局、右の両瑕疵それぞれの存否の判断権を、公労委
と人事院に分属させることとしたものであると解される。したがつて、一個の不利
益処分であつても、これに対する行政上の救済手続は、右の両瑕疵のいずれを有す
るかによつて異なることとならざるをえないのであつて、不当労働行為該当の瑕疵
を理由としては人事院に対して審査請求をすることができず、それ以外の瑕疵を理
由としては公労委に対して救済の申立てをすることができないのであり、それ故に
また、右処分に右の両瑕疵が併存するとされる場合には、人事院と公労委の双方に
対し、それぞれの瑕疵を理由として、別々に行政上の救済を求めるほかないのであ
る。
  この点に関し、所論は、右処分についての不当労働行為該当の瑕疵がそれ以外
の瑕疵と不可分一体のものとなつているような場合には、その不当労働行為該当の
瑕疵を理由としても国公法九〇条により人事院に対して審査請求をすることができ
ると解すべきであるとし、これを前提に、右の場合に関するかぎり、不当労働行為
該当の瑕疵を理由としていても、国公法九二条の二の適用があるものとしなければ
ならない旨主張する。しかし、右の両瑕疵それぞれの法律上の要件は、別個のもの
であるから、一定の事実がそれぞれの法律要件に該当するか否かの判断は、別個の
ものというべきであり、しかも、右処分に不当労働行為該当の瑕疵が存するか否か
の判断権が人事院に属するものでないことは、既に述べたとおりである。それゆえ、
所論は、その前提を欠く。
 五 (不利益処分の効力を裁判上争う方法)
  不利益処分に瑕疵があるとしてその効力を裁判上争うには、その瑕疵が重大か
つ明白でないかぎり、取消訴訟(行訴法三条二項参照)によることを要し、右処分
に不当労働行為該当の瑕疵があるとするときも、そのことに変わりのないことは、
右二、三に述べたところから明らかである。
  ところで、国公法九二条の二の規定と国公法九〇条、公労法二五条の五、四〇
条三項等の規定を総合すると、不利益処分に対して不服のある現業公務員は、右処
分に不当労働行為該当の瑕疵以外の瑕疵があるものとする場合には、あらかじめ人
事院に対し審査請求をしてそれに対する裁決を経たうえでなければ、その取消しを
裁判上請求することができないのに対し、右処分に不当労働行為該当の瑕疵がある
ものとする場合には、審査請求をすることが許されないため、直ちにその取消しを
裁判上請求することができるという関係にあるといいうるが、このことと右四に述
べたところとを合わせ考えると、右処分に対する取消訴訟は、同一の処分に対して
その瑕疵の態様が右のいずれに属するかによつて、二個の別異の訴訟となるとする
見解が、一見合理的であると考えられないでもない。しかしながら、一個の行政処
分につき二個の取消訴訟の提起を認めることは、行政処分に対する取消訴訟一般の
建前に反し、実際上も訴訟関係の重複錯雑をきたすから、法律解釈上そう解するほ
かはない場合は格別、そうでないかぎり相当ではなく、したがつて、前示の見解を
採用することは当を得たものとはいえない。
 そうすると、右処分に対する取消訴訟は、瑕疵の態様いかんに拘らず一個のもの
であつて、前述の行政救済手続における瑕疵の区分は、訴訟手続上は単に攻撃防禦
方法の提出ないし審理に関する区分としての意味を有するにすぎないものと解すべ
きであり、国公法九二条の二の規定は、右処分に対する取消訴訟に関しては、出訴
の要件としてではなく、単に主張ないし審理の能否についてのみ意義を有すること
となる。
 それゆえ、不利益処分に不服のある者は、直ちに右処分に対する取消訴訟を提起
することができ、行訴法一四条所定の出訴期間内に適法に提起された訴訟において
は、右処分のすべての瑕疵を争いうるのであり、ただ、不当労働行為該当の瑕疵以
外の瑕疵を当事者が主張しまた裁判所が審理するについては、国公法九二条の二に
おける審査請求前置の趣旨に鑑み、審査請求に対する人事院の裁決を経由すること
を要し、これを経ないかぎり(ただし、行訴法八条二項各号の事由があるときは、
右裁決の経由を要しないものと解すべきである。)、その主張、審理が制限される
結果となるのである。
 六 (結   び)
  以上によれば、行訴法一四条一項の期間内に提起された本件訴えは、いずれも
適法なものというべきであり、本件処分について審査請求に対する人事院の裁決を
経ておらず、行訴法八条二項各号の事由があるともいえないから、本件訴訟手続に
おいて、右処分に不当労働行為該当の瑕疵以外の瑕疵が存するとの点を主張、審理
することは制限されることを免れないが、右処分に不当労働行為該当の瑕疵が存す
るとの点を主張、審理することが制限されることはないのであつて、事実審裁判所
としては、その当否につき実体審理を尽くすべきものである。


(最判昭和49年7月19日 民集 第28巻5号897頁)

概略
一、現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分は、抗告訴訟の対象となる行政処分である。
二、不当労働行為該当の瑕疵を有する現業国家公務員に対する国家公務員法八九条一項所定の処分は、違法ではあるが、右瑕疵が重大かつ明白でないかぎり、当然無効ではない。
三、国家公務員法八九条一項所定の処分を受けた現業国家公務員は、直ちに右処分に対する取消訴訟を提起することができるが、右訴訟において不当労働行為該当の瑕疵以外の瑕疵を争うについては、審査請求に対する人事院の裁決を経由することを要する。


参考条文

国家公務員法
(職員の意に反する降給等の処分に関する説明書の交付)
第八十九条 職員に対し、その意に反して、降給し、降任し、休職し、免職し、その他これに対しいちじるしく不利益な処分を行い、又は懲戒処分を行わうとするときは、その処分を行う者は、その職員に対し、その処分の際、処分の事由を記載した説明書を交付しなければならない。
○2 職員が前項に規定するいちじるしく不利益な処分を受けたと思料する場合には、同項の説明書の交付を請求することができる。
○3 第一項の説明書には、当該処分につき、人事院に対して審査請求をすることができる旨及び審査請求をすることができる期間を記載しなければならない。

(審査請求と訴訟との関係)
第九十二条の二 第八十九条第一項に規定する処分であつて人事院に対して審査請求をすることができるものの取消しの訴えは、審査請求に対する人事院の裁決を経た後でなければ、提起することができない。


行政事件訴訟法
(処分の取消しの訴えと審査請求との関係)
第八条 処分の取消しの訴えは、当該処分につき法令の規定により審査請求をすることができる場合においても、直ちに提起することを妨げない。ただし、法律に当該処分についての審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消しの訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項ただし書の場合においても、次の各号の一に該当するときは、裁決を経ないで、処分の取消しの訴えを提起することができる。
一 審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないとき。
二 処分、処分の執行又は手続の続行により生ずる著しい損害を避けるため緊急の必要があるとき。
三 その他裁決を経ないことにつき正当な理由があるとき。
3 第一項本文の場合において、当該処分につき審査請求がされているときは、裁判所は、その審査請求に対する裁決があるまで(審査請求があつた日から三箇月を経過しても裁決がないときは、その期間を経過するまで)、訴訟手続を中止することができる。

posted by 判例ラノベ化プロジェクト at 09:09| 判例原文集 行政法

2019年04月01日

民法84 判例六法 丸暗記ドリル【メルマガ版】 #司法試験 #司法書士試験 #行政書士試験


★今日の問題★
次の記述の正誤を答えよ。

譲渡担保権設定者は、譲渡担保権の実行として譲渡された不動産を取得した者からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができる。


10秒で考えよう。よーいドン!

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒

10秒

★今日の解説★

正しい。
 不動産を目的とする譲渡担保権が設定されている場合において、譲渡担保権者が譲渡担保権の実行として目的不動産を第三者に譲渡したときは、譲渡担保権設定者は、右第三者又は同人から更に右不動産の譲渡を受けた者からの明渡請求に対し、譲渡担保権者に対する清算金支払請求権を被担保債権とする留置権を主張することができるものと解するのが相当である。(最判平成9年4月11日)





●【公務員、宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説

難化する一方の行政書士、司法書士試験の民法を攻略するためのポイントは、試験科目の条文と判例を徹底的に読み込むことです。
条文と判例の知識の量によって行政書士、司法書士試験の合否が左右されると言っても過言ではありません。
とは言え、判例六法等で、民法の第一条から読み込んでいくのは、きついものがあります。
このテキストは、会話文形式で、民法の第一条から第千四十四条まで学ぶことができます。条文を一通り読むと同時に、重要な判例知識を学ぶことができます。




→ 【公務員、宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法入門 ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 民法総則編 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 物権法編・担保物権法編 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 債権総論編 現行法版 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 債権各論編 現行法版 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 親族法編 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 相続法編 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ民法債権法改正講義実況中継 民法総則編 ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ民法債権法改正講義実況中継 債権総論編1 ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))

→ 【宅建士、行政書士、司法書士試験対応版】ライトノベルで学ぶ民法債権法改正講義実況中継 債権総論編2 ライトノベルで学ぶ 民法条文 逐条解説 (楽々合格国家資格試験ノベルズ(WEB限定版))


posted by 判例ラノベ化プロジェクト at 20:40| オリジナル問題