2019年05月17日

風俗営業許可処分の取消訴訟と風俗営業制限地域居住者の原告適格 行政事件訴訟法 第九条

 一 本件は、平成五年一二月二七日に被上告人が風俗営業等の規制及び業務の適
正化等に関する法律(以下「法」という。)三条一項に基づいてしたぱちんこ屋の
営業許可が違法であるとして、当該ぱちんこ屋の近隣住民である上告人らが、その
取消しを求める事件である。
 行政事件訴訟法九条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条にいう当
該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により
自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそ
れのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的
利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の
個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、
かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害
され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告
適格を有するものというべきである。そして、当該行政法規が、不特定多数者の具
体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨
を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保
護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである(最高裁平成
元年(行ツ)第一三○号同四年九月二二日第三小法廷判決・民集四六巻六号五七一
頁、最高裁平成六年(行ツ)第一八九号同九年一月二八日第三小法廷判決・民集五
一巻一号二五〇頁参照)。
 二 右の見地に立って、本件訴えについての上告人らの原告適格について検討す
る。
 法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及
ぼす行為を防止するため、風俗営業及び風俗関連営業等について、営業時間、営業
区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制すると
ともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を
講ずることを目的とする(法一条)。右の目的規定から、法の風俗営業の許可に関
する規定が一般的公益の保護に加えて個々人の個別的利益をも保護すべきものとす
る趣旨を含むことを読み取ることは、困難である。
 また、風俗営業の許可の基準を定める法四条二項二号は、良好な風俗環境を保全
するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都
道府県の条例で定める地域内に営業所があるときは、風俗営業の許可をしてはなら
ないと規定している。右の規定は、具体的地域指定を条例に、その基準の決定を政
令にゆだねており、それらが公益に加えて個々人の個別的利益をも保護するものと
することを禁じているとまでは解されないものの、良好な風俗環境の保全という公
益的な見地から風俗営業の制限地域の指定を行うことを予定しているものと解され
るのであって、同号自体が当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護
することを目的としているものとは解し難い。
 ところで、右の法の委任を受けて規定された風俗営業等の規制及び業務の適正化
等に関する法律施行令(以下「施行令」という。)六条一号ロ及び二号は、特にそ
の周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある特定の施設に着目して、当該
施設の周囲おおむね百メートルの区域内の地域を風俗営業の制限地域とすべきこと
を基準として定めている。この規定は、当該特定の施設の設置者の有する個別的利
益を特に保護しようとするものと解されるから、法四条二項二号を受けて右基準に
従って定められた風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(昭
和五九年東京都条例第一二八号)(以下「施行条例」という。)三条一項二号は、
同号所定の施設につき善良で静穏な環境の下で円滑に業務をするという利益をも保
護していると解すべきである(最高裁平成四年(行ツ)第一〇九号同六年九月二七
日第三小法廷判決・裁判集民事一七三号一一一頁参照)。これに対し、施行令六条
一号イの規定は、「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少
ない地域」を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広
がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかで
あって、同号口のように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は
見当たらない。このことに、前記のとおり法一条にも法四条二項二号自体にも個々
人の個別的利益の保護をうかがわせる文言がないこと、同号にいう「良好な風俗環
境」の中で生活する利益は専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐ
わないとはいえないことを併せ考えれば、施行令六条一号イの規定は、専ら公益保
護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、右基準に従
って規定された施行条例三条一項一号は、同号所定の地域に居住する住民の個別的
利益を保護する趣旨を含まないものと解される。したがって、右地域に住居する者
は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。
 これらのほかに、上告人らが本件風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有
すると解すべき根拠は見当たらない。


(最判平成10年12月17日 民集 第52巻9号1821頁)


概略

 風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律施行令六条一号イの定める基準に従って規定された都道府県の条例所定の風俗営業制限地域に居住する者は、同地域内における風俗営業許可処分の取消しを求める原告適格を有しない。




※風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令
(風俗営業の許可に係る営業制限地域の指定に関する条例の基準)
第六条 法第四条第二項第二号の政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 風俗営業の営業所の設置を制限する地域(以下この条において「制限地域」という。)の指定は、次に掲げる地域内の地域について行うこと。
イ 住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域(以下「住居集合地域」という。)
ロ その他の地域のうち、学校、病院その他の施設でその利用者の構成その他のその特性に鑑み特にその周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある施設として都道府県の条例で定めるもの(以下「保全対象施設」という。)の周辺の地域
二 前号ロに掲げる地域内の地域につき制限地域の指定を行う場合には、当該保全対象施設の敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲おおむね百メートルの区域を限度とし、その区域内の地域につき指定を行うこと。
三 前二号の規定による制限地域の指定及びその変更は、風俗営業の種類及び営業の態様、地域の特性、保全対象施設の特性、既設の風俗営業の営業所の数その他の事情に応じて、良好な風俗環境を保全するため必要な最小限度のものであること。

※風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律
(許可の基準)抜粋
第四条
2 公安委員会は、前条第一項の許可の申請に係る営業所につき次の各号のいずれかに該当する事由があるときは、許可をしてはならない。
一 営業所の構造又は設備(第四項に規定する遊技機を除く。第九条、第十条の二第二項第三号、第十二条及び第三十九条第二項第七号において同じ。)が風俗営業の種別に応じて国家公安委員会規則で定める技術上の基準に適合しないとき。
二 営業所が、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内にあるとき。
三 営業所に第二十四条第一項の管理者を選任すると認められないことについて相当な理由があるとき。




参考条文

行政事件訴訟法
(原告適格)
第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。



posted by 判例ラノベ化プロジェクト at 19:45| 判例原文集 行政法

2019年05月16日

民法104 判例六法 丸暗記ドリル【メルマガ版】 #司法試験 #司法書士試験 #行政書士試験



★今日の問題★
次の記述の正誤を答えよ。

詐害行為取消の効果は取消を命ずる判決の確定により生ずるのであるから、所有権取得原因たる贈与契約が詐害行為に該当するとして右契約の取消を命ずる判決がなされても、右判決が確定しないかぎり、譲受人が右動産所有権を喪失しない。



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★今日の解説★

 正しい。
 詐害行為取消の効果は取消を命ずる判決の確定により生ずるのであるから、譲受人の所有権取得原因たる贈与契約が詐害行為に該当するとして右契約の取消を命ずる判決がなされても、右判決が確定しないかぎり、譲受人が右所有権を喪失するいわれのないことは明らかである。(最判昭和40年3月26日)






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posted by 判例ラノベ化プロジェクト at 21:44| オリジナル問題

がけ崩れのおそれが多い土地等を開発区域内に含む開発許可の取消訴訟と開発区域周辺住民の原告適格 行政事件訴訟法 第九条

 一 本件訴えは、平成四年二月二四日に被上告人がD株式会社及び株式会社E建
築事務所に対し都市計画法(同年法律第八二号による改正前のもの。以下同じ。)
二九条に基づいてした開発許可が違法であるとして、当該許可に係る開発区域に近
接する地域に居住する上告人らが、その取消しを求めるというものである。
 行政事件訴訟法九条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条にいう当
該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」とは、当該処分により
自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるお
それのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体
的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人
の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、
かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害
され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告
適格を有するものというべきである。そして、当該行政法規が、不特定多数者の具
体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨
を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保
護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである(最高裁平成
元年(行ツ)第一三〇号同四年九月二二日第三小法廷判決・民集四六巻六号五七一
頁参照)。
 二 右の見地に立って、本件訴えについての上告人A1、同A2(以下「上告人
A1ら」という。)の原告適格について検討する。
 1 所論は、上告人A1ら個々人の利益を保護する趣旨を含む規定として都市計
画法三三条一項一四号を指摘する。しかし、同号が上告人A1らの個別的利益を保
護する趣旨の規定であるとは解されない。その理由は、次のとおりである。
 確かに、開発許可の基準を規定している同項のうち一四号は、開発行為をしよう
とする土地等につき当該開発行為の施行等の妨げとなる権利を有する者の相当数の
同意を得ていることを許可基準と定めている。しかし、右規定は、開発許可をして
も、許可を受けた者が開発区域等について私法上の権原を取得しない限り開発行為
等をすることはできないことから、開発行為の施行等につき相当程度の見込みがあ
ることを許可の要件とすることにより、無意味な結果となる開発許可の申請をあら
かじめ制限するために設けられているものと解され、開発許可をすることは、右の
権利に何ら影響を及ぼすものではない。したがって、右の規定が右の権利者個々人
の権利を保護する趣旨を含むものと解することはできない。
 2 ところで、原判決の摘示するところによれば、上告人A1らは、本件の開発
区域に近接する肩書住所地に居住しており、本件開発許可に基づく開発行為によっ
て起こり得るがけ崩れ等により、その生命、身体等を侵害されるおそれがあると主
張しているところ、都市計画法三三条一項七号は、開発区域内の土地が、地盤の軟
弱な土地、がけ崩れ又は出水のおそれが多い土地その他これらに類する土地である
ときは、地盤の改良、擁壁の設置等安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定
められていることを開発許可の基準としている。この規定は、右のような土地にお
いて安全上必要な措置を講じないままに開発行為を行うときは、その結果、がけ崩
れ等の災害が発生して、人の生命、身体の安全等が脅かされるおそれがあることに
かんがみ、そのような災害を防止するために、開発許可の段階で、開発行為の設計
内容を十分審査し、右の措置が講ぜられるように設計が定められている場合にのみ
許可をすることとしているものである。そして、このがけ崩れ等が起きた場合にお
ける被害は、開発区域内のみならず開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する
住民に直接的に及ぶことが予想される。また、同条二項は、同条一項七号の基準を
適用するについて必要な技術的細目を政令で定めることとしており、その委任に基
づき定められた都市計画法施行令二八条、都市計画法施行規則二三条、同規則(平
成五年建設省令第八号による改正前のもの)二七条の各規定をみると、同法三三条
一項七号は、開発許可に際し、がけ崩れ等を防止するためにがけ面、擁壁等に施す
べき措置について具体的かつ詳細に審査すべきこととしているものと解される。以
上のような同号の趣旨・目的、同号が開発許可を通して保護しようとしている利益
の内容・性質等にかんがみれば、同号は、がけ崩れ等のおそれのない良好な都市環
境の保持・形成を図るとともに、がけ崩れ等による被害が直接的に及ぶことが想定
される開発区域内外の一定範囲の地域の住民の生命、身体の安全等を、個々人の個
別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうす
ると、【要旨1】開発区域内の土地が同号にいうがけ崩れのおそれが多い土地等に
当たる場合には、がけ崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の
地域に居住する者は、開発許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者と
して、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。なお、都
市計画法の目的を定める同法一条の規定及び都市計画の基本理念を定める同法二条
の規定には、開発区域周辺の住民個々人の個別的利益を保護する趣旨を含むことを
うかがわせる文言は見当たらないが、そのことは、同法三三条一項七号に関する以
上の解釈を妨げるものではない。
 以上の理解に立って本件をみると、本件開発区域は急傾斜の斜面上にあり、本件
開発行為は、六階建ての共同住宅の建築の用に供する目的で、斜面の一部を掘削し
て整地し、擁壁を設置するなどというものであるところ、上告人A1らは、右斜面
の上方又は下方の本件開発区域に近接した土地に居住している者であることが記録
上明らかである。そうすると、都市計画法三三条一項七号が開発区域の周辺住民個
々人の利益を保護する趣旨を含むものではないという解釈に基づき、本件開発区域
内の土地が同号にいうがけ崩れのおそれが多い土地等に当たるかどうか、及び上告
人A1らががけ崩れ等による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に
居住する者であるかどうかについて、何らの検討もすることなく、上告人A1らの
原告適格を否定した原判決及び第一審判決は、いずれも法令の解釈適用を誤るもの
であり、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。
 三 以上によれば、原判決が上告人A1らの原告適格を否定したことを非難する
論旨は、右の趣旨をいう点において理由があり、その余の点について判断するまで
もなく、原判決中上告人A1らに関する部分は破棄を免れず、岡部分につき第一審
判決を取り消した上、これを横浜地方裁判所に差し戻すこととする。
 職権をもって調査するに、【要旨2】記録によれば、上告人A3は、本件訴訟が
当審に係属した後の平成七年九月二〇日死亡したことが明らかである。同上告人の
有していた本件開発許可の取消しを求める法律上の利益は、同上告人の生命、身体
の安全等という一身専属的なものであり、相続の対象となるものではないから、本
件訴訟のうち同上告人に関する部分は、その死亡により終了したものというべきで
ある。

(最判平成9年1月28日 民集 第51巻1号250頁)


概略

 一 開発区域内の土地が都市計画法(平成四年法律第八二号による改正前のもの)三三条一項七号にいうがけ崩れのおそれが多い土地等に当たる場合には、がけ崩れ等により生命、身体等に直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は、開発許可の取消訴訟の原告適格を有する。
二 開発行為によって起こり得るがけ崩れ等により生命、身体等を侵害されるおそれがあると主張して開発許可の取消訴訟を提起した開発区域周辺住民が死亡したときは、右訴訟は当然終了する。



※都市計画法
(開発許可の基準)抜粋
第三十三条 都道府県知事は、開発許可の申請があつた場合において、当該申請に係る開発行為が、次に掲げる基準(第四項及び第五項の条例が定められているときは、当該条例で定める制限を含む。)に適合しており、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない。
七 地盤の沈下、崖崩れ、出水その他による災害を防止するため、開発区域内の土地について、地盤の改良、擁壁又は排水施設の設置その他安全上必要な措置が講ぜられるように設計が定められていること。


参考条文

行政事件訴訟法
(原告適格)
第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

posted by 判例ラノベ化プロジェクト at 19:24| 判例原文集 行政法

公有水面埋立免許処分等取消 行政事件訴訟法 第九条

 一 原審の適法に確定したところによれば、本件の事実関係はおおむね次のとお
りである。
 1 参加人は、D火力発電所建設工事の一環として、本件公有水面を埋め立てて
取水口外郭施設用地を造成することを計画し、本件公有水面を含む水面において漁
業権を有するE漁業協同組合(以下「E漁協」という。)に対し、本件公有水面を
右漁業権に係る漁場の区域から除外することを要請した。
 2 E漁協は、右要請を受け、水産業協同組合法四八条一項及び五〇条の規定に
基づき、昭和四七年五月三一日の総会において、議決権を有する全組合員一四六名
の無記名投票の結果、賛成一〇三票、反対四三票をもつて、本件公有水面を右漁業
権に係る漁場の区域から除外する旨の漁業権の変更を議決し、漁業法二二条一項の
規定に基づき、昭和四八年六月二五日、右漁業権の変更につき被上告人の免許を受
けた。右漁業権は同年八月三一日をもつて存続期間の満了により消滅し、E漁協は
同年九月一日新たな漁業権の免許を受けたが、本件公有水面は新たな漁業権に係る
漁場の区域からも除外されている。
 3 参加人は、昭和四七年八月一四日、被上告人に対し、本件公有水面の埋立て
の免許(以下「本件埋立免許」という。)を出願した。被上告人は、参加人に対し、
昭和四八年法律第八四号による改正前の公有水面埋立法(以下「旧埋立法」という。)
二条の規定に基づき、昭和四八年六月二五日、本件埋立免許を行うとともに、同法
二二条の規定に基づき、昭和五〇年一二月一八日、本件公有水面の埋立工事の竣功
認可(以下「本件竣功認可」という。)を行つた。
 4 上告人A1は、E漁協の組合員として、その漁業権の内容たる漁業を営む権
利を有する者である。上告人A2は、F漁業協同組合(以下「F漁協」という。)
の組合員として、その漁業権の内容たる漁業を営む権利を有する者であるところ、
F漁協の漁業権は、E漁協の漁業権の存する水面の北西側に連接し、かつ、本件公
有水面に近接する水面に存する。
 二 上告人らは、本件埋立免許及び本件竣功認可の取消しを請求して本件訴えを
提起しているところ、行政処分の取消訴訟は、その取消判決の効力によつて処分の
法的効果を遡及的に失わしめ、処分の法的効果として個人に生じている権利利益の
侵害状態を解消させ、右権利利益の回復を図ることをその目的とするものであり、
行政事件訴訟法九条が処分の取消しを求めるについての法律上の利益といつている
のも、このような権利利益の回復を指すものである。したがつて、処分の法的効果
として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に限つて、
行政処分の取消訴訟の原告適格を有するものというべきであるが、処分の法律上の
影響を受ける権利利益は、処分がその本来的効果として制限を加える権利利益に限
られるものではなく、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政
権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益もこれに当たり、
右の制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとす
る者も、当該処分の取消しを訴求することができると解すべきである。そして、右
にいう行政法規による行政権の行使の制約とは、明文の規定による制約に限られる
ものではなく、直接明文の規定はなくとも、法律の合理的解釈により当然に導かれ
る制約を含むものである。
 三 これを本件についてみるに、旧埋立法に基づく公有水面の埋立免許は、一定
の公有水面の埋立てを排他的に行つて土地を造成すべき権利を付与する処分であり、
埋立工事の竣功認可は、埋立免許を受けた者に認可の日をもつて埋立地の所有権を
取得させる処分であるから、当該公有水面に関し権利利益を有する者は、右の埋立
免許及び竣功認可により当該権利利益を直接奪われる関係にあり、その取消しを訴
求することができる。しかしながら、原審の認定した前記事実関係に照らせば、上
告人らは、本件公有水面に関し権利利益を有する者とはいえないのである。この点
に関し、論旨は、漁業権変更の議決については、漁業法八条三項及び五項の規定に
より、特定区画漁業又は第一種共同漁業を営む者で地元地区又は関係地区の区域内
に住所を有するものの三分の二以上の書面による事前の同意を必要とするところ、
E漁協の前記漁業権変更の議決は右同意を欠き無効であるから、E漁協は本件公有
水面において依然漁業権を有し、したがつて上告人A1も本件公有水面において漁
業を営む権利を有するというが、漁業権の変更につき漁業法八条三項及び五項の規
定の適用はなく、また、これを類推適用すべきものともいうことができないから、
E漁協の前記漁業権変更の議決を無効とすることはできない。さらに、論旨は、上
告人A2の所属するF漁協は、本件公有水面に近接する水面において漁業権を有し
ているから、本件公有水面から引水をなしこれに排水をなす者又はこれに準ずる者
であるというが、近接する水面において漁業権を有しているからといつて本件公有
水面に関し引水又は排水の権利利益を有するとは到底いうことができない。
  そうすると、上告人らは、本件公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利
を有するにすぎない者というべきであるが、本件埋立免許及び本件竣功認可が右の
権利に対し直接の法律上の影響を与えるものでないことは明らかである。そして、
旧埋立法には、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む者の権利を保護する
ことを目的として埋立免許権又は竣功認可権の行使に制約を課している明文の規定
はなく、また、同法の解釈からかかる制約を導くことも困難である。
 四 以上のとおりであるから、上告人らは、本件埋立免許又は本件竣功認可の法
的効果として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者と
いうことができず、その取消しを訴求する原告適格を有していないといわざるをえ
ない。これと同旨の見解のもとに、上告人らの原告適格を否定し、本件訴えを不適
法とした原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法は
なく、論旨はいずれも採用することができない。


(最判昭和60年12月17日 集民 第146号323頁)

概略


 公有水面埋立法(昭和四八年法律第八四号による改正前のもの)二条の埋立免許及び同法二二条の竣功認可の取消訴訟につき、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利を有するにすぎない者は、原告適格を有しない。



参考条文

行政事件訴訟法
(原告適格)
第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

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2019年05月15日

民法103 判例六法 丸暗記ドリル【メルマガ版】 #司法試験 #司法書士試験 #行政書士試験


★今日の問題★
次の記述の正誤を答えよ。

不動産物権の譲渡行為が債権者の債権成立前にされた場合には、その登記が右債権成立後に経由されたときであつても、詐害行為取消権は成立しない。



10秒で考えよう。よーいドン!

1秒

2秒

3秒

4秒

5秒

6秒

7秒

8秒

9秒

10秒

★今日の解説★

 正しい。
 債務者の行為が詐害行為として債権者による取消の対象となるためには、その行為が右債権者の債権の発生後にされたものであることを必要とするから、詐害行為と主張される不動産物権の譲渡行為が債権者の債権成立前にされたものである場合には、たといその登記が右債権成立後にされたときであつても、債権者において取消権を行使するに由はない(大審院大正六年(オ)第五三八号同年一〇月三〇日判決・民録二三輯一六二四頁参照)。
 なぜなら、物権の譲渡行為とこれについての登記とはもとより別個の行為であつて、後者は単にその時からはじめて物権の移転を第三者に対抗しうる効果を生ぜしめるにすぎず、登記の時に右物権移転行為がされたこととなつたり、物権移転の効果が生じたりするわけのものではないし、また、物権移転行為自体が詐害行為を構成しない以上、これについてされた登記のみを切り離して詐害行為として取り扱い、これに対する詐害行為取消権の行使を認めることも、相当とはいい難いからである。(最判昭和55年1月24日)





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とは言え、判例六法等で、民法の第一条から読み込んでいくのは、きついものがあります。
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