2019年04月16日

行政事件訴訟法 第九条 風俗営業許可取消

 DはE医院の敷地の周囲三〇メートル以内には所在していないので本件営業許可
処分に違法はないとした原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当
として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することがで
きない。
 同第二点について
 風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律四条二項二号、風俗営業等の規
制及び業務の適正化に関する法律施行令六条二号及びこれらを受けて制定された風
俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律施行条例(昭和五九年神奈川県条例
第四四号)三条一項三号は、同号所定の診療所等の施設につき善良で静穏な環境の
下で円滑に業務を運営するという利益をも保護していると解すべきである。したが
って、一般に、当該施設の設置者は、同号所定の風俗営業制限地域内に風俗営業が
許可された場合には、右の利益を害されたことを理由として右許可処分の取消しを
求める訴えを提起するにつき原告適格を有するというべきである。
 ところで、原審の認定したところによれば、本件においては、DはE医院の敷地
からは三〇・三九ないし三二・二〇メートルの距離にあり、その周囲三〇メートル
以内には所在せず、右風俗営業制限地域内において風俗営業が許可された場合には
該当しないというのであるから、結果としては、上告人は本訴につき原告適格を有
しないかにみえる。しかしながら、右事実関係からすれば、Dは、それが制限地域
内に所在しているか否かは実体審理をしなければ判明しない程度の至近距離内にあ
るのであるから、原審としては、上告人の原告適格を審査するに当たっては、処分
の適否という本案についてと同一の審理をせざるを得ず、それなくして直ちに原告
適格の有無を判断することはできない関係にある。したがって、そのような場合に
は、たとい審理の結果当該施設が制限区域内に所在していないことが明らかになっ
たとしても、審理は既に本案の判断をするに熟しているのであるから、単に右訴訟
における原告適格を否定して訴え却下の訴訟判決をするのではなく、本案につき請
求棄却の判決をするのが、訴訟の実際にかなうゆえんである。原審は、上告人の原
告適格を認めた上で、許可に係る風俗営業が制限区域内にはない旨を認定し、本訴
請求は棄却すべきであるとした上、不利益変更禁止の原則により、本件訴えを却下
した一審判決を維持すべきものとして控訴を棄却したのであるから、この措置は正
当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は採用することが
できない。

(最判平成6年9月27日  集民 第173号111頁)

概略

 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律四条二項二号及び風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令六条二号を受けて制定された風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(昭和五九年神奈川県条例第四四号)三条一項三号所定の診療所等の施設を設置する者が、同号所定の風俗営業制限地域内において風俗営業が許可されたとしてその取消しを求める訴訟において、当該風俗営業の営業所が右地域内に所在しているか否かは実体審理をしなければ判明しない程度に右施設の至近距離にあるときは、審理の結果、右営業所が制限地域内に所在していないことが明らかになったとしても、本案につき判決をすべきである。
(補足意見がある。)


関連条文

行政事件訴訟法
(原告適格)
第九条 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
2 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

posted by 判例ラノベ化プロジェクト at 09:17| 判例原文集 行政法