2019年02月28日

行政事件訴訟法第三条 在留特別許可処分義務付け等請求事件

 1 出入国管理及び難民認定法50条1項に基づく在留特別許可は,同法49条1項に基づく異議の申出があったときに初めて付与され得るものであるところ,法務大臣が同法50条1項の判断権限を発動し,その結果在留特別許可が付与されるか否かは,異議の申出をした容疑者にとって本邦への在留が認められるか否かの重大な利益にかかわる事柄であり,このような容疑者の重大な利益にかかわる判断権限を法務大臣の裁量で発動しないことが許されているとは到底解し得ないから,法務大臣は,異議の申出を受理し,同申出に理由がないと認める場合には,当該容疑者が同法50条1項各号に該当するか否かを審査する義務があり,その結果,その者に在留特別許可を付与すべきであると判断したときは,その旨の許可処分を,在留特別許可を付与すべきでないと判断したときは,異議の申出が理由がない旨の裁決をそれぞれ行うことによって,在留特別許可の許否についての判断の結果を当該容疑者に示す義務があると解するのが相当であるとした上,このような仕組みによれば,同法は,同法49条1項の異議の申出権を,法50条1項の在留特別許可を求める申請権としての性質を併せ有するものとして規定し,かつ,当該申請に対しては在留特別許可を付与するか否かの応答をすべき義務を法務大臣に課したものと解するのが自然であるから,在留特別許可の義務付けを求める訴えは,行政事件訴訟法3条6項2号に規定するいわゆる申請型義務付けの訴えと解するのが相当である。


2 日本国籍を有する女性と約16年間にわたり共同生活を続けたガーナ共和国国籍を有する男性がした,出入国管理及び難民認定法49条1項に基づく異議の申出に対し,法務大臣から権限の委任を受けた入国管理局長がした同申出には理由がない旨の裁決の取消し及び在留特別許可の義務付けを求めた各請求につき,本邦への在留を希望する外国人が,日本人との間に法律上又は事実上の婚姻関係がある旨を主張し,当該日本人も当該外国人の本邦への在留を希望する場合において,両者の関係が,両性が永続的な精神的及び肉体的結合を目的として真摯な意思をもって共同生活を営むという婚姻の本質に適合する実質を備えていると認められる場合には,当該外国人に在留特別許可を付与するか否かの判断に当たっても,そのような事実は重要な考慮要素としてしん酌されるべきであり,他に在留特別許可を不相当とするような特段の事情がない限り,当該外国人に在留特別許可を付与しないとする判断は,重要な事実に誤認があるために全く事実の基礎を欠く判断,又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くために社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかな判断として,裁量権の逸脱,濫用となるものと解するのが相当であるとした上,前記ガーナ共和国国籍を有する男性は,日本国籍を有する女性と約16年間の長期にわたる共同生活を続けてきたものであり,この間の生活状況は,内縁関係と呼ぶにふさわしい実質を備えたものであったことがうかがわれ,前記裁決の翌日には婚姻の届出がされたことにより法律上の婚姻関係も成立していることなどに照らせば,前記入国管理局長は,前記裁決に当たり,前記男性と女性との関係が婚姻の本質に適合する実質を備えていると認められるにもかかわらず,これを誤認したか,又は,これを過小に評価することによって,前記男性に在留特別許可を付与しないとの判断をしたものということができ,他に在留特別許可を不相当とするような特段の事情が認められない以上,前記判断は裁量権の逸脱,濫用になるというべきであるとして,前記裁決の取消請求を認容し,在留特別許可の義務付けの請求については,在留資格及び在留期間等の条件を指定しないで認容した事例

( 東京地方裁判所 平成20年2月29日)

※参考条文

行政事件訴訟法
(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。


出入国管理及び難民認定法
(異議の申出)
第四十九条 前条第八項の通知を受けた容疑者は、同項の判定に異議があるときは、その通知を受けた日から三日以内に、法務省令で定める手続により、不服の事由を記載した書面を主任審査官に提出して、法務大臣に対し異議を申し出ることができる。
2 主任審査官は、前項の異議の申出があつたときは、第四十五条第二項の審査に関する調書、前条第四項の口頭審理に関する調書その他の関係書類を法務大臣に提出しなければならない。
3 法務大臣は、第一項の規定による異議の申出を受理したときは、異議の申出が理由があるかどうかを裁決して、その結果を主任審査官に通知しなければならない。
4 主任審査官は、法務大臣から異議の申出(容疑者が第二十四条各号のいずれにも該当しないことを理由とするものに限る。)が理由があると裁決した旨の通知を受けたときは、直ちに当該容疑者を放免しなければならない。
5 主任審査官は、法務大臣から異議の申出(容疑者が出国命令対象者に該当することを理由とするものに限る。)が理由があると裁決した旨の通知を受けた場合において、当該容疑者に対し第五十五条の三第一項の規定により出国命令をしたときは、直ちにその者を放免しなければならない。
6 主任審査官は、法務大臣から異議の申出が理由がないと裁決した旨の通知を受けたときは、速やかに当該容疑者に対し、その旨を知らせるとともに、第五十一条の規定による退去強制令書を発付しなければならない。

(法務大臣の裁決の特例)
第五十条 法務大臣は、前条第三項の裁決に当たつて、異議の申出が理由がないと認める場合でも、当該容疑者が次の各号のいずれかに該当するときは、その者の在留を特別に許可することができる。
一 永住許可を受けているとき。
二 かつて日本国民として本邦に本籍を有したことがあるとき。
三 人身取引等により他人の支配下に置かれて本邦に在留するものであるとき。
四 その他法務大臣が特別に在留を許可すべき事情があると認めるとき。
2 前項の場合には、法務大臣は、法務省令で定めるところにより、在留資格及び在留期間を決定し、その他必要と認める条件を付することができる。
3 法務大臣は、第一項の規定による許可(在留資格の決定を伴うものに限る。)をする場合において、当該外国人が中長期在留者となるときは、入国審査官に、当該外国人に対し、在留カードを交付させるものとする。
4 第一項の許可は、前条第四項の規定の適用については、異議の申出が理由がある旨の裁決とみなす。


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