2019年02月08日

行政事件訴訟法第三条 消防法第七条による消防長の建築許可の同意、同意の拒絶、又は同意の取消は行政処分か。

 論旨は、所論の本件消防長のなした同意取消は、行政事件訴訟特例法の対象とな
る行政処分であると主張するに帰する。しかし同法が行政処分の取消変更を求める
訴を規定しているのは、公権力の主体たる国又は公共団体がその行為によつて、国
民の権利義務を形成し又はその範囲を確定することが法律上認められている場合に、
行政庁によつてなされる具体的行為によつて、権利を侵害された者のために、その
違法を主張せしめ、その効力を失わしめるためである(昭和二八年(オ)第一三六
二号、同三〇年二月二四日第一小法廷判決、民集九券二号二一七頁参照)。従つて、
かかる抗告訴訟の対象となるべき行政庁の行為は、対国民との直接の関係において、
その権利義務に関係あるものたることを必要とし、行政機関相互間における行為は、
その行為が、国民に対する直接の関係において、その権利義務を形成し、又はその
範囲を確定する効果を伴うものでない限りは、抗告訴訟の対象とならない(昭和二
五年(オ)第三二九号、同二七年一月二五日第二小法廷判決、民集六巻一号三三頁、
同二五年(オ)第一六〇号、同二七年三月六日第一小法廷判決、民集六巻三号三一
三頁参照)。そして、このことは、行政事件訴訟特例法により行政庁の行為の無効
確認を求める場合においても同様である。しかるに本件消防長の同意は、知事に対
する行政機関相互間の行為であつて、これにより対国民との直接の関係においてそ
の権利義務を形成し又はその範囲を確定する行為とは認められないから、前記法律
の適用については、これを訴訟の対象となる行政処分ということはできない。それ
故、本件においては、知事のなした建築出願不許可処分に対し、その違法を理由と
して行政訴訟を適法に提起し、その訴訟において、右不許可処分の前提となつた消
防長の同意拒絶乃至同意取消の違法を主張しうることは格別、行政機関相互間の行
為たるに止まる、知事に対する消防長の本件同意拒絶乃至同意取消の違法を主張し
て消防長を被告としてその取消乃至無効確認を求める訴は、不適法たるを免れず、
これと同趣旨に出でた原判決は正当である。所論は採るを得ない。

(最判昭和34年1月29日 民集 第13巻1号32頁)

概略

 消防法第七条によつて消防長がした建築許可の同意、同意の拒絶、又は同意の取消は行政事件訴訟特例法にいう行政庁の処分ではない。



※参考条文

行政事件訴訟法
(抗告訴訟)
第三条 この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
2 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
3 この法律において「裁決の取消しの訴え」とは、審査請求その他の不服申立て(以下単に「審査請求」という。)に対する行政庁の裁決、決定その他の行為(以下単に「裁決」という。)の取消しを求める訴訟をいう。
4 この法律において「無効等確認の訴え」とは、処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無の確認を求める訴訟をいう。
5 この法律において「不作為の違法確認の訴え」とは、行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内に何らかの処分又は裁決をすべきであるにかかわらず、これをしないことについての違法の確認を求める訴訟をいう。
6 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げる場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟をいう。
一 行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場合を除く。)。
二 行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は審査請求がされた場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされないとき。
7 この法律において「差止めの訴え」とは、行政庁が一定の処分又は裁決をすべきでないにかかわらずこれがされようとしている場合において、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求める訴訟をいう。


消防法
第七条 建築物の新築、増築、改築、移転、修繕、模様替、用途の変更若しくは使用について許可、認可若しくは確認をする権限を有する行政庁若しくはその委任を受けた者又は建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第六条の二第一項(同法第八十七条第一項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定による確認を行う指定確認検査機関(同法第七十七条の二十一第一項に規定する指定確認検査機関をいう。以下この条において同じ。)は、当該許可、認可若しくは確認又は同法第六条の二第一項の規定による確認に係る建築物の工事施工地又は所在地を管轄する消防長又は消防署長の同意を得なければ、当該許可、認可若しくは確認又は同項の規定による確認をすることができない。ただし、確認(同項の規定による確認を含む。)に係る建築物が都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第五号に掲げる防火地域及び準防火地域以外の区域内における住宅(長屋、共同住宅その他政令で定める住宅を除く。)である場合又は建築主事が建築基準法第八十七条の二において準用する同法第六条第一項の規定による確認をする場合においては、この限りでない。
○2 消防長又は消防署長は、前項の規定によつて同意を求められた場合において、当該建築物の計画が法律又はこれに基づく命令若しくは条例の規定(建築基準法第六条第四項又は第六条の二第一項(同法第八十七条第一項の規定によりこれらの規定を準用する場合を含む。)の規定により建築主事又は指定確認検査機関が同法第六条の四第一項第一号若しくは第二号に掲げる建築物の建築、大規模の修繕(同法第二条第十四号の大規模の修繕をいう。)、大規模の模様替(同法第二条第十五号の大規模の模様替をいう。)若しくは用途の変更又は同項第三号に掲げる建築物の建築について確認する場合において同意を求められたときは、同項の規定により読み替えて適用される同法第六条第一項の政令で定める建築基準法令の規定を除く。)で建築物の防火に関するものに違反しないものであるときは、同法第六条第一項第四号に係る場合にあつては、同意を求められた日から三日以内に、その他の場合にあつては、同意を求められた日から七日以内に同意を与えて、その旨を当該行政庁若しくはその委任を受けた者又は指定確認検査機関に通知しなければならない。この場合において、消防長又は消防署長は、同意することができない事由があると認めるときは、これらの期限内に、その事由を当該行政庁若しくはその委任を受けた者又は指定確認検査機関に通知しなければならない。
○3 建築基準法第六十八条の二十第一項(同法第六十八条の二十二第二項において準用する場合を含む。)の規定は、消防長又は消防署長が第一項の規定によつて同意を求められた場合に行う審査について準用する。
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